「きれいになりたい」の、その先にあるもの
美容鍼灸を始めた頃の私は、今よりもずっと「外見の美しさ」に目を向けていました。
「リフトアップしたい」
「小顔になりたい」
「ほうれい線を目立たなくしたい」
「肌をきれいにしたい」
患者さんが求めていることに応えることが、美容鍼灸の役割だと思っていたのです。
だから、どうしたらもっと顔が引き上がるのか。
どうしたらもっと小顔に見えるのか。
どうしたら施術後に「変わった!」と喜んでもらえるのか。
そんなことを考えながら施術をしていました。
もちろん、今でも「きれいになりたい」という気持ちは、とても大切なものだと思っています。
でも、たくさんの患者さんと向き合い、施術を続ける中で、少しずつ私の中に変化が生まれていきました。
患者さんが本当に求めているものは、外見だけではない
施術が終わった後、
「気持ちよかった」
「心地よかった」
「なんだかすっきりした」
「身体が軽くなった気がする」
そんな言葉を多くいただきます。
最初に伺ったお悩みは、「顔をリフトアップしたい」「小顔になりたい」といった外見に関するものだったとしても、施術後に満足して帰られる理由は、必ずしも外見の変化だけではない。
そのことに、私は少しずつ気づくようになりました。
そして、次に来院されたときには、以前とは違うお話をされることもあります。
「最近、眠れていなくて……」
「仕事が忙しくて疲れています」
「肩や首がずっと重くて」
「なんとなく身体の調子がよくなくて」
「最近、気持ちが落ち込むことがあって」
最初は「美容」のために来ていたはずなのに、いつの間にか、身体のことや心のことを話してくださる。
そんな患者さんの変化を見ているうちに、私は考えるようになりました。
患者さんが本当に求めている「美しさ」って、顔だけのことなのだろうか・・・?
元気な身体だけでも、美しい顔だけでもない
身体が元気であることは、もちろん大切です。
でも、身体に不調がなくても、心が疲れ切っていたら、それを「本当の健康」と言えるのだろうか。
反対に、顔がきれいに整っていても、毎日がつらかったり、疲れきっていたり、自分自身を大切にできていなかったら、それは本当に「美しい」と言えるのだろうか。
私は、少し違うのではないかと思うようになりました。
外見だけが美しい。
身体だけが元気。
それだけではなく、
心も、身体も、そして外見も、その人らしく健康で整っていること。
それが、私が考える本当の美しさ、「健康美」なのかもしれない。
そんなふうに考えるようになりました。
心や身体が整うと、最初の悩みが気にならなくなることもある
もうひとつ、施術を続ける中で感じるようになったことがあります。
それは、患者さん自身の心や身体の状態が整ってくると、最初に来院されたときに気にされていた「外見の悩み」が、いつの間にか気にならなくなっていることがあるということです。
もちろん、すべての方に同じ変化が起こるわけではありません。
でも、以前は「フェイスラインが気になる」「顔のむくみが気になる」と話していた方が、しばらくすると、
「最近、あまり気にならなくなりました」
と話されることがあります。
そのときに、私は「顔だけを変えたから」ということではないのかもしれない、と思うようになりました。
よく眠れるようになった。
身体の緊張が少なくなった。
疲れを感じたときに、きちんと休めるようになった。
以前よりも、自分自身に目を向けられるようになった。
そうやって心や身体の状態が少しずつ整っていく中で、表情や顔の印象にも変化が現れたり、そもそも「ここが嫌だ」と思っていたことへの意識が変わったりする。
そんなこともあるのではないかと感じています。
そして、これは私にとって、とても興味深いことでした。
「きれいになるために、きれいな部分だけを見る必要はないのかもしれない。」
そう思うようになったのです。
顔だけを見ていても分からないことがある。
身体だけを見ていても分からないことがある。
その人の生活や、心の状態、日々の疲れや緊張。
そういったものも含めて、その人自身を見ていく。
そうすると、最初に「変えたい」と思っていたところが、いつの間にか変わっていることがある。
私は、そんな経験を患者さんとの時間の中で何度も感じてきました。
一瞬の「きれい」だけを届けたいわけではない
美容鍼灸というと、どうしても「顔をきれいにするもの」というイメージがあるかもしれません。
もちろん、リフトアップや小顔、肌の状態など、外見の変化を求めて来院されることは大切なことです。
私も、その気持ちにしっかり応えたいと思っています。
でも、施術をしていると感じるのです。
「一瞬だけきれいになりたい」という人は、実はそれほど多くないのではないか。
本当は、
「元気でいたい」
「疲れにくい身体でいたい」
「毎日笑顔で健やかに過ごしたい」
「気持ちよく毎日を過ごしたい」
「自分に自信を持ちたい」
「年齢を重ねても、自分らしくきれいでいたい」
そんな思いが、その奥にあるのではないかと思うのです。
そして、そのことに本人自身が気づいていない場合もあります。
最初は「小顔になりたい」と思って来院した方が、施術を受けて「なんだかすっきりした」と感じる。
そして、次に来院したときには、顔の悩みだけではなく、睡眠や疲れ、身体の緊張、日々のストレスについて話してくださる。
私は、そこに美容鍼灸の面白さがあるように感じています。
「きれいになる」ことから、「整える」ことへ
美容鍼灸を続ける中で、私自身の考え方も変わりました。
以前は、
「どうしたら、もっときれいにできるだろう?」
ということを考えていました。
今は、
「どうしたら、この人が心地よく、自分らしく過ごせるだろう?」
ということを、より考えるようになりました。
きれいになることは、もちろん嬉しい。
でも、顔がすっきりして、身体も軽くなって、気持ちまで少し前向きになる。
施術を終えたときに、
「なんか、すっきりした」
と感じてもらえる。
そして、また明日から少し元気に過ごせる。
私は、そんな美容鍼灸を届けたいと思っています。
外見だけではない。
身体だけでもない。
心も、身体も、外見も。
その人全体を見ながら、その人らしい「美しさ」を一緒に考えていく。
それが、今の私が大切にしている美容鍼灸です。
そして、この気づきが、私が「美容」だけではなく、「心」と「身体」についてもっと深く学びたいと思うようになったきっかけのひとつでもあります。
これからも、患者さんとの時間の中で感じたことや、私自身が学び、考えていることを、このブログで少しずつ綴っていきたいと思います。
「きれいになりたい」の、その先にあるもの。
それは、もしかしたら、
「心地よく、自分らしく生きたい」
ということなのかもしれません。
私は美容鍼灸を通して、そんな時間を届けていきたいと思っています。